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(3)実験結果
操縦流体力に支配的影響を与える揚力体としての性質をもたらす剥離渦は、斜航時流場においては、前部船体から剥離して流れてくる剥離渦グループと、船尾縦渦を主体とする船尾渦グループに大別される事が確認された。
解析結果の一部であるA、B、C3船型のA.P.断面における渦度分布を、図3.2.3.4.1に示す。
右に斜航角がつくと、右舷側に前部船体からの剥離渦が現れ、斜航角が大きくなるにつれて、前部船体からの剥離渦と右舷船尾縦渦は強さと大きさを増してゆき、左舷船尾縦渦は弱く小さくなってゆく。
伴流分布においても、斜航角がつくと生じる剥離渦に対応する伴流域が現れてくる。強い伴流分布域は、おおよそ強い渦度分布域に対応している。
船尾形状の違いによる流場の違いは、船尾断面の渦度分布、伴流分布においては、集中度と分布位置に現れている。U型船尾(B)とV型船尾(A)では明瞭な差が現れ、中間型船尾(C)では、中間的な流場となっている。
直進状態においては、U型船尾がV型船尾に比べ、船尾縦渦は強く、伴流分布も強くかつ広く分布している。
斜航状態においては、渦度分布は、V型船尾の方が集中度が強く、U型の法は集中度が弱く広い範囲に分布している、前部船体からの剥離渦および船尾渦の重心位置も、船尾形状により明瞭な差が出ている。伴流分布は、おおよそ渦度分布の分布状況に対応している。
中間型船尾のC船型については、船体後方の流場も計測した。
船体後方では、直進状態においては、船尾流場の相殺が進むとともに伴流分布も大きく回復している。斜航状態になると、船尾上流舷側に生じた剥離渦は相殺され、おおよそ斜航成分のみの渦度分布となる。この斜航状態における船尾渦と前部船体からの剥離渦の循環はA.P.断面とS.S.−2断面とで殆ど変わっていない。
つまり、剥離渦の斜航成分は同じ強さを保ちながら船体後方へ流れており、船体を揚力体と見なす自由渦モデルによる流場近似の妥当性を示している。
(4)まとめ
主要目が同じで船尾形状の異なる3隻のVLCC船型について、斜航時の船尾流場を計測し、船尾断面における流場の様子を定量的に把握した。
船尾断面における渦度分布、船体後方での剥離渦の挙動等、理論計算による実用的操縦流体力推定法の研究に有益な資料、および、詳しい速度分布、渦度分布等、CFDによる高精度流場推定法の研究に有益な資料を得る事が出来た。

 

 

 

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